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2005.08.02

キレイ ~神様と待ち合わせした女~

「メディア」と「シンデレラ・ストーリー」と「近代能楽集」の感想を書いてねぇぇぇぇ!でも、ここで書かないと「キレイ」まで書かないでしまいそうな気がするから、あえてショートカットっぉぉ。

というわけで、7月30日はシアターコクーンで「キレイ~神様と待ち合わせした女~」の千秋楽を観てきた。大人計画ものとしては、ウーマンリブ公演だった「轟天v.s.港カヲル」、どうも評判的にも自分の感想的にも今ひとつだった「イケニエの人」以来、満を持しての松尾スズキ作品である。
奥菜恵主演での初演といえば、当時また大人計画をよく知らなかった私ですら評判を聞いていた名作。というか、それは単に岩井俊二→奥菜恵というルートがあったからかもしれんが(^^;; まぁとにかく、ようやく名作の域にある(のか?)松尾作品を観る事ができるってぇわけで、それでまずは大興奮。

ケガレ :鈴木蘭々
ミサ :高岡早紀
ハリコナA :阿部サダヲ
カネコキネコ :片桐はいり
ダイズ丸 :橋本じゅん
マジシャン :宮藤官九郎
ジュッテン :大浦龍宇一
カネコジョージ :松尾スズキ
ダイダイカスミ :秋山菜津子
ハリコナB :岡本健一

つらつらと感想を。

舞台というものは一見奥行きがない。空間的にも時間的にも制限された”場”であるからだ。その限りなく狭い空間をいかに壮大な小宇宙として観客に魅せることができるのか?というのが、舞台人達に課せられた命題なのではないか。などと柄にも無く感じ入ってしまった舞台だった。

「キレイ」は、20m四方に満たない空間に過去と未来・此岸と彼岸、時間も次元も超越した小宇宙が形成される話であると同時に、それはただ一人の少女の内面世界探求の話だったりしたというのが観終わった後の率直な感想。
4時間二幕モノ、観客の忍耐力の限界に挑戦か?とも思える、非常に長い長いお話でもあるのだが、この小宇宙を形作るためには、なるほどそれだけの入念な下地作りがいるもんなのね。と納得してしまうような、丁寧で綿密な構成だったのではないかと思う。正直長さはまったく感じなかった。

扉を開け地下を脱出する「過去」のケガレ、神像を倒し地下に入る「現在」のミサ。異なる時間軸に生きる二人。決して交わること無い二人の邂逅。4時間かけて、あぁなるほどこの場面が描きたかったのか。と腑に落ちる、緻密な構成にノックダウン。
そして、決して交わることの無いケガレとミサの本当の邂逅が人格の統合(なのか?)という形で描かれるにいたっては、やはり松尾スズキの天才を感じないわけにはいかない。

ミサとケガレとミサ。それぞれが分断された人格を持つ、一人の女。

ダイズ丸やら、ハリコナやら、カスミさんやらのモブ達が世界に厚みを与えている。そして、モチーフの切り取り方とデフォルメの仕方が秀逸だ!たまらん。かなりたまらん。

キャストのこと
皆さん、本当に素晴らしい出来で。大満足。
でも、初演を観ていないにも関わらず、初演に出演していた人の舞台を観ているせいか、ついつい比較しちゃうという悪癖が頭をもたげてしまったのは、いたしかたあるまい。あぁ初演も観てみたかったなぁと思わせなかったのは、ミサとハリコナBかなぁ。


ケガレ:鈴木蘭々
よく頑張った!と誉めてあげたい~。酒井若菜の体調不良によるいきなりの主役登板。しかも大人計画の「キレイ」。さぞかし大変だったと思う。最後の最後で声を詰まらせる姿を見てしまっては、ついついもらい泣きしちゃったよ。
蘭々のケガレは可愛かった。10年監禁されてきた、世間知らずで、どこか危うい少女だった。黒目がちの深い瞳でじっと虚空を見つめる姿。ケガレには、何かある。そう思わせるまなざしが非常によかった。「影」ではない。過去がないケガレには「影」はないと思うのだ。ぽっかりと空いた”穴”。心のどこかに穴が開いた少女。頼るものとてないよるべない身の上であり、キネコ達との生活に馴染んだようでいながらも、やはり何か埋められないものを持っている少女。
ハリコナAとの恋ともよべないような、子供子供した愛情の交換は今思い出すと、なかなかに切ない。
うん、やっぱよく頑張った!!

でも、酷なようだが、奥菜の初演を観てない私が、なんとなく「あぁ、奥菜、こういう風にやったんだろうなぁ。」と感じてしまう、奥菜ベースのケガレだったのではないかなぁなどと感じた。


ミサ :高岡早紀
キレイだった...。まぢで。立っている姿も踊っている姿も。最初は存在感的にどうかなぁとか思ったりもしたのだが、舞台が進むにつれてキレイで儚げで、どこかおかしくて、悲しいミサにはまってしまった。なんつぅかすごく庇護欲をかきたてる女というか。でも、サディスティックに当り散らしたくなる女というか。ぶんなぐりながら、「おらっ(真実に向かって)走れ!」といいたくなる、そんな女。


ハリコナA :阿部サダヲ
前回、悪評の「イケニエの人」にあっても彼の存在感、華には目を見張るものがあったのだが、はぁぁぁぁ、さすがの魅力である。
かわいくて、えろくて、おばか。
楽しくて、哀しくて、おばか。
さいこーである。
アルジャーノン(というかチャーリィ)も満足であろう。


ダイズ丸 :橋本じゅん
じゅんさん大好き。ネタも満載。
二幕、女装・オカケンとのズラかぶりデュエットでは、椅子に沈み込んで大爆笑をかまさせていただきやした。「いいんじゃなぁーい」もタバコネタも健在(笑)。
でも、じゅんさんのダイズ丸は良くも悪くも「純」な感じ。二幕、気味の悪さが際立ってきた、エゴイスティックなダイズ丸になってさえも、やはり根底にどこか「純」があったような気がする。
じゅんさんが好きなだけに、というか古田新太も好きなだけに、ダイズ丸こそ古田新太のも観たい!と痛切に思ってしまった。おそらくは毒と色気と危ない狂気をはらんでいたであろう古田・ダイズ丸を観ることで、より二人の差がはっきりして、今回のダイズ丸のことを理解できるような気がするのだ。


ジュッテン :大浦龍宇一
真面目なジュッテンだった。この役こそ、初演(クドカン)とエライ違いがあったようだ。私は大浦・ジュッテンしか観てないわけで、それで納得・不満もありゃしませんって感じだったのだが、クドカン・ジュッテンの話を聞くとやはりそっちも観てみたくなったりして。
大浦龍宇一という役者はよくわからない。TVで観ても、どうも一つのイメージ、色にまとまらない。TVでも舞台でも、観るたび顔が違うような印象がある。化けているということか。


ダイダイカスミ :秋山菜津子
やられた!やっぱりすごい女優だった!
SHIROHのお密さんで見せた、あのキリリとした女丈夫ぶりは微塵もなかった。ぶりぶりの可愛さを見せ付ける、20歳の、世間知らずで、独善的で、悲劇に酔うヒロインという要素を過分にデフォルメされたキャラクターを強烈に演じていた。
ヒロインの条件というものを無知の知で嗅ぎ当て、自分をそこにはめこむ、松尾スズキならではのデフォルメぶりがツボにはまった。
ジュッテンとの別れのシーンの全裸の後姿もお見事!


ハリコナB :岡本健
念願のオカケン舞台~!
エロい!セクシー!フェロモン!BL!耽美!
彼に対しては、まぁ、ありとあらゆるフェロモン系修辞をもって賛美したい(^^;;
初演の篠井さんのハリコナBもそりゃぁよかっただろうが、オカケン・ハリコナBと阿部サダヲのペアも大満足だ。
ハリコナBが非情に振舞えば振舞うほど、人でなしで、ゲイに振舞えば振舞うほど、ミサの透明度が増していくという、美味しい役だよなぁ。


カネコジョージ :松尾スズキ
すっげ、面白かった!なるほど、この色気とおかしさか。と思ってしまった。
開演は酔っ払いオヤジに扮した松尾スズキが客席に現れて始まった。
ちょうど、開演前「ねぇ、SMAPの新曲聴いた?」というような話をしていたところに、「ばかぁん、ばかぁん~」と歌いながら登場するわけで、つかみはオッケェ大爆笑だ。
こんな父ちゃんいやだぁぁぁぁぁぁぁ。という魅力全開の変なオヤヂぶりがまたもう堪らん。


この舞台。もう1回くらい観たかったなぁ。かなりの衝撃を受けたのだが、正直、台詞や歌というものがあまり頭に入ってない。それが悔しい。世界観やプロットを理解するのに精一杯で、松尾スズキのつむぎだすデフォルメされた台詞や世界観を自分の脳に理解できるように変換するのに精一杯で、あんまり覚えてないのよ。ちっ!

あぁ、次の大人計画速くやらないかなぁ~。

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Comments

深い洞察と感想の深み流石です。

初見だと、結構ガツーンとヤラレテしまったんでは無いかと思います。

めちゃ笑える所満載だけど、なんか凄く深い話。

地下室、戦争が起こっている地上、それから宇宙にまで、
時間軸も最初はどこを進んでいるか、分らなくなる感覚も
だとしてもそんなに観てる時は混乱しない。
だけど最後のシーンで あれ?って急にフラッシュバックする感覚。

前回の公演で、3回くらい見てようやく私は全体を掴んだ感じでした。

前回、まだ無垢なイメージだった奥菜恵が、一大変身を遂げた舞台でしたよ。

バツイチとなった今は、ミサが出来る資格を得ました。
いや、そうでなく是非初演版を見て下さいませ。

>アリクイさん

本当にね。まだ片鱗に触れただけって感じ。
実は、最後の蘭々の涙と、ケガレ&ミサの衝撃で、他がふっとんでしまったという感じもしているのですよ。
うーん、あと何回かは観たかったなぁ~。
初演もやっぱり観たいよなぁ。

あ、そういえば書き忘れたけど(アリクイさんとは飲みで言ったかもしれないけど)、私の一番すきな歌は「ヘビーメンスシスターズ!」(^^;;

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